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2020.08.29 Saturday

去りゆく一時代に捧ぐ(『極夜』より)

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    〈『極夜3』第四章 顕然〉より
     

    「蘇我秘書官は、恐ろしい人ですね。心底そう思います」
     津田の非難は幾分か、自分に向けられている。当然だった。
    「もしかすると、首相が変わっても、次の首相の秘書官を務める気では?」
    「それは充分あり得る」
     鮎原は認めた。実は霞ヶ関には、そう信じ始めている官僚も多い。
    「死ぬまで権力を握り続ける気なんですね。

    でなくては、こんな気の長いことを本気でやれない。いったい、どこまで……」


    ・・・・・・・

     

     若い頃から首相秘書官の座を狙っていたとしか思えなかった。

     国の仕組みを理解し、政治家の操縦の仕方を会得しながら出世を重ね、まんまと官邸入りして筆頭秘書官の座についた。首相の方から是非にと乞われたのだ。
     蘇我金司はまさに国を仕切っている。自分の思うがままの国にしようとしている。

    それは、上と下がはっきり分かれ、一部の権力者が大衆を支配する社会だ。

    支配者側にとっては最も統制しやすい構造。鮎原は蘇我に舌を巻き続けてきた。

    国はこうやって簒奪するのだ、という教科書を見せられているような。

    自分は指をくわえて見ている子供に過ぎない気がした。

     

     

     

     

     

    〈『極夜3』第七章 報罪〉より


     篁は蘇我に向き直った。優先順位を思い出したように。
    「権力を失ったあなたなど、だれも怖くないんですよ。

     むしろあなたが、復讐に気をつけるべきですね。

     すべての政敵と、あなたが虐げてきた人民からの復讐にね」

     

    ・・・・・・・

     

     そうですね、と川路は複雑な思いで同意した。
    「もちろん奴のことだから、油断できない。

     いつ、権力者たちに強権を使わせて、カムバックを図るか分かりません。

     しかしさすがに、首相秘書官には返り咲けない。それが常識的な見方だとは思います」
     津田は希望を唄った。
     川路も頷く。そうであってほしい。

     

     

     


     

     

     

     

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